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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第35章 毒






ぎゅっと掴んだままだった私の手を彼の手がやんわり離すとクスリと笑みを向けられる


「………そんな顔しなくても明日には回復するから」


「………ほんまですか………?」


自分が今どんな表情を浮かべているか解らない

だけど漏れ出た私の声は酷く震えていて情けない表情を向けているのだと言う事は解った


「………少し疲れたから休む」


言いながら首筋に刺した針を抜き取る彼の指先
そして全く気付かなかったが首裏に手を伸ばした彼は実に三本もの針を指先に持っていた



…………彼は先程の様に針を自身の身体に刺して動作を誤魔化していた事に成る


途端に全身から力が抜けた様にソファーに沈む彼に胸がズキズキと痛んだ


身体を誤魔化してまで仕事を遂行した事実



私が何もせずに部屋で漠然と時間を費やしている内にも彼は危険に晒されているのだと再確認すれば胸がぎゅっと痛い



先程よりも格段に荒い息遣いに表情を隠した黒髪を避ければ覗いたのは眉を潜めて悲痛に歪む見たことも無い表情の彼だった



「………イルミさん」



力無くソファーに置かれた大きな手を握る


私に出来る事は何も無い


荒い呼吸の合間に咳き込む彼の背中を擦る

ぎゅっと閉じられた瞼に苦しそうな唸り声


形の良い唇から赤黒い血液を吐き出した彼に涙が頬を流れ落ちた




「………はぁっ……っ…タオル貰える?」


言われた通りにタオルを持ち何度も何度も拭った

大好きで愛しい人が血を吐き出す姿は私に重たい現実を繰り返し教える

一枚目のタオルは真っ赤に染まり二枚目のタオルで懸命に彼の頬や唇を拭う




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