ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第34章 遊園地と目撃
バクバクと早い心音は彼等を目撃した興奮よりも彼が私の所に戻って来ては不味いと言う思考からだった
……………私の存在はゾルディックには内密…………
彼とキルアが鉢合わせしてしまえば私の存在が露見してしまう………
運悪くも隣のベンチに腰を下ろしてアイスを食べる二人を視界の端に捉えて私はベンチから立ち上がった
携帯を取り出して彼へ電話を掛ける
……………着信に気付かず戻って来ても鉢合わせは同じ
………しかし私さえこの場に居なければ何とか誤魔化せるのでは無いかと思う
一先ずこの場から離れるのが先決
繰り返す通話音に祈る気持ちでベンチから歩き出す
『もしもし。』
「もしもし!……不味いです………ゴンとキルア君に会いました……このままやったらイルミさんと私の事バレます………」
出来るだけ小声で伝えれば
『解った、出口で落ち合おう』
明確な目的地を伝えてくれた
……………折角のデートだが彼の迷惑には成りたくない
ゾルディックに知れたらどうなってしまうのかは私には想像する事しか出来ないがキルアとの接触を避けて速やかに遊園地を出ると選択した彼の言葉に重味を感じた
出口を出て辺りをキョロキョロしていると彼は突然目の前に現れた
「イ、イルミさん」
正確には全くの気配を感じ取れずそう錯覚したのだが
「まさかキルに邪魔されるとはね。」
気だるげに長い髪をかき上げた彼は溜息交じりに言うと私の手を引いて歩き始めた
「また仕切り直そう。」
デートが途中で終わってしまうのは非常に残念だが彼の言葉に"また"があるのだと
そしてホテルに帰っても彼と過ごせる時間があるのだと思えば沈んだ気持ちは直ぐに明るく成った
何より………あんなにも彼が固執していた弟よりも私を優先してくれる事が嬉しくて
「イルミさん大好きです!!」
弾んだ私の告白に
「知ってる。」
彼は余裕の笑みを落とし
暑い太陽の光にくっきり黒い私達の影は楽しそうに揺れていた