ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第33章 のんびりと休日
「ちょっと待って!!!!!マジで怖いっ!!!!!無理!!!!!」
ガッツリしがみ付いて拒否する私を無視して歩みを進める彼はあっという間にホテルの縁に立った
「無理無理無理無理無理………!!!」
瞬間身体を包んだ浮遊感
相当な距離を跳んだのかスローモーションで見える地面の遠さに生きた心地がしなかった
そして彼が着地したのは隣のビルの窓枠と何とも不安定な場所で全身を脈打つ心臓が耳に煩く私は気が付くと泣いていた
「イルミさん……………早く地面に………」
震える声を上げながら彼のガウンをシワシワにしてぎゅっと握る
「登るから掴まっててね。」
彼は垂直のビルを登ると言い出した
…………登る……………?
頭が真っ白に成った私をそのままに片腕でガンガン壁を登る彼に揺られ遠退く地面に意識が朦朧とする
どれだけ揺られていたのか
「はい、到着。」
なんて単調に言った彼に下ろされた久しぶりに思える地面に私はへたり込んだ
身体中から力が抜けて動けない
「ホテルより高いビルだし、夜景が綺麗に見えるよ。」
平然と私を見下ろし強風に髪を緩く抑えた彼は私に手を差し伸べた
「………腰が……………抜けて…………」
ガクガク震える身体に力は微塵も入らなかった
すると彼は軽々私をお姫様抱っこしてビルの縁迄歩き始め
恐怖から必死に彼の首へしがみ付いていた私だが
「ほら、見て。」
彼の優しい声色に恐る恐る瞼を開くと派手な街のネオンが揺れる美しい夜景が眼下に広がっていた
ホテルも相当な高層階だがホテルよりも高いビルからはもっと遠くが見晴らせる他、ガラス越しで無い分クリアな景色は見惚れる程に美しかった
「…………綺麗………」
「でしょ。」
綺麗な夜景を誰も居ないビルの屋上で彼と二人眺める今の時間にキュンとして特別に思った私だが
「ホテルの屋上に着地する。」
「…………神様助けて……………」
私は部屋に戻る迄ずっと震えながら泣いていた