ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第33章 のんびりと休日
「…………イルミさんはこの映画どうですか?」
「リアリティーに欠ける。」
「…………そ、そうですか」
隣の彼は表情ひとつ変えずに画面を見据えていて流石暗殺者だなと思う
しかもリアリティーに欠けると言ってしまう辺り人の死に触れ、数々の命を奪ったのだと思うと不思議な気分に成った
……………彼は人の命を奪う瞬間何を考えて何を思うのだろう………
私は一生味わう事の無い感情がそこにはあるのだろうか
「………イルミさんって仕事中何考えてます?」
ずっと画面を見詰めていた視線が私を捉える
「何も考えてない。自分は人形だと思ってる。」
…………人を殺める人形…………
只無感情に命を奪う事を強いられた幼い彼を思うと心臓がぎゅっと痛んだ
「…………お仕事終わりは………?」
「任務完了、早く帰ろう……かな。」
「…………。」
確かに私の様な感性を持っていれば務まらない仕事だ
感情を消した方が良いのは解る
………しかし本来の彼は決して無感情な人では無い
その苦悩の重みは私には到底理解出来なくて、きっと彼も語る事は無いのだろう
「…………沙夜子?」
気が付くと考え込んでいた私の顔を至近距離で覗き込む美形に心臓が飛び出しそうになった
「………は、はい!!!!」
裏返った声とみるみる内に体温を上げる身体で彼を見詰めれば彼は溜息を付いた後に元の位置へ姿勢を戻した
「そんな事より主人公殺されたよ。」
「………えっ!!!」
主人公とは快楽殺人者の事である
無敵の残虐性を持っていた男が……
「だ、誰に…………」
「恋人。」
「………恋人………」
快楽殺人者には恋人がいた
この恋人には異常な執着を見せながらも素敵に優しく振る舞っていた
そんな主人公に何処か彼を重ねていた私だが………まさか恋人に殺されるだなんて思いもしなかった………