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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第32章 優しい人







私はそれだけ彼を怒らせてしまったのだ


彼は何も悪くない

寧ろ私の我が儘に譲歩してくれる優しい人


「イルミさんを怒らせてしまったのは私です……私が言い付け破ったし………」


「それとこれとは別だよ。……痛かったでしょ」


「………痛かったですけど………」


本当に痛かったがまさか痣になるなんて思っても見なかった

一体どんな力で掴んでいたのだろう……

彼からしてみればほんの少し力を込めたくらいなのだろうが……骨が粉砕しなくて良かった………


「………沙夜子、俺の事怖い?」


色々考えていた私だがその言葉に彼をじっと見詰めた

大きな瞳が不安気に揺れる

私は確かに彼を怖いと言った

平凡な人生を歩んで来た私が今まで命の危機に貧したのはストーカーの女性くらいのものだ

暗殺を生業とする彼が怒り、針を向けた事はそんな私にとって恐怖だった

命を奪われる事は無くても自分が自分じゃ無くなってしまうというのは酷く恐ろしい

それをあの時私は口にした

しかし今の彼は優しい何時もの彼で

私を操作しないと手のひらを差し出した彼を怖いとは全く感じなかった


「いえ、全く!イルミさんは優しい人です!」


笑った私を彼はぎゅっと抱き締めた

肩に埋められた顔から、頼もしい腕から優しい体温が伝わる


大好きで大切な人


私が笑えば


「何。」


彼は訳が解らないと言った風に呟いた


「私達初めて喧嘩しましたね!なんか嬉しくて」


そのままの気持ちを伝える


今まで一緒に生活していても喧嘩らしい喧嘩なんてした事が無かった

いつも私が一人で怒っているか彼がお説教をする

彼が感情を露にして怒りをぶつける事等皆無だったのだ

だけど今日は違った

何時ものお説教なんて彼にしてみれば只の注意なのだと気付かされた

感情の希薄な彼が私に感情を見せてくれた事に私達の距離の近さを実感した


抱き締め合ったまま見詰め合えば


「そっか。喧嘩か………人生で初めて喧嘩した。」


なんて彼は大きな瞳をクリクリさせるので私はまた笑ってしまい


「笑う所じゃ無いよ。」


「イルミさんが可愛いから!」


「………意味が解らない。」




部屋には何時もの穏やかな雰囲気が流れていた






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