ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第31章 届かない言葉
「無断で外出したね?フロントの観察係から連絡があったよ。」
私の肩を掴んだ力の強さに表情が歪む
静かに前進する彼に追いやられ、たどり着いたのはガラス張りの壁なのだと冷たい感覚が教えた
「ひ……ひとりじゃないです……」
「ヒソカでしょ。ボディーガードが縛り付けられてた近くにトランプが落ちてた」
私を鋭く見下ろす彼の長い黒髪が頬を滑り彼の香りが鼻を掠める
「ごめんなさい。……ヒソカさんと出掛けました」
「どうして……この部屋で待っててって言ったよね……」
一層手の力が強まりキリキリと音を上げる痛みに私は短い悲鳴を上げる
確かに約束を守れていないし怒られて当然だが私はルールの改善を求める事にした
物に溢れた広い部屋で只帰りを待つだけの日々は窒息しそうに息苦しい
強い友人が付いているなら彼の主張を汲み取っても問題無い筈だ
「………いっ…!!………だってイルミさんこの世界が危険やから私を心配してこの部屋に閉じ込めたんでしょ?それやったら強いヒソカさんが付いてたら問題無い筈です」
彼の瞳が冷たく猟奇に染まる
「…………ヒソカが何をしたか忘れたの?」
「ヒソカさんは謝ってくれました!!反省してたから私をバーで助けてくれました!!ヒソカさんがいてなかったら私は死んでた!!」
「さっきからヒソカヒソカって煩いんだけど。ヒソカの何を信用出来る訳?」
怒りに歪んだ表情を私は初めて見たかもしれない
………彼は誤解している……
ヒソカさんは彼に、私に危害を加える事を止めたと話した
あの言葉は疑いの余地無く真っ直ぐに私に届いた