ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第31章 届かない言葉
「そう言えば沙夜子ちゃんの連絡先知らないや……写真送ろうと思ったんだけど携帯持ってる?♥️」
私はヒソカさんの言葉にポシェットから白い携帯を取り出した
「持ってます!写真送ってください!」
「勿論♥️」
私達は連絡先を交換した
正直彼に罪悪感が全く無い訳では無いけれど本当の私を知る人物は見渡せば大勢の人が行き交うこの世界でたったの三人なのだ
それを考えるだけで漠然とした孤独を感じる私は彼以外の人間とのコミュニケーションも必要だと思った
彼の名前しか入っていない連絡帳にヒソカさんの文字が新たに加わり胸が弾む
「暑いしアイスクリームでも食べたいなぁ……沙夜子ちゃんは?♥️」
「アイスクリーム賛成です!」
ヒソカさんが連れて来てくれたのは公園の傍に止まっていた移動販売車だった
水色と白の可愛い車にアイスクリームのメニューが貼られていてワクワクと眺めていたのだが自身が現金を持ち合わせていない事に気が付いて肩を落とした
「ボクはソーダパインにしようかな………沙夜子ちゃんは?♥️」
素敵な笑顔を向けるヒソカさんに苦笑いを浮かべる
「すみません、私お金持ってませんでした……」
私の言葉にクスクスと笑い始めたヒソカさんは
「一人じゃつまんないから一緒に食べよう、何にする?♥️」
なんて優しい言葉で私にアイスクリームを奢ってくれた
直ぐ近くの木陰のベンチに二人で座るとそよそよ揺れる風に涼しさを感じる
流石に二人共サングラスを取って襟元にぶら下げているが陽気な見た目に変わり無く久しぶりの外出だし会話する相手が居る楽しさに私は声を弾ませてヒソカさんとお喋りした
バーで出会った夜に気付いたがヒソカさんは話し上手の聞き上手で自然と漂わせる妖艶な雰囲気も慣れてしまえばヒソカさんの個性なのだと然程気にならない
………しかし……舌を突き出してアイスクリームを食べるヒソカさんは何だか色っぽくて視線を反らす
私も同じ様に食べている筈なのにヒソカさんの醸し出す雰囲気は流石だ………なんて思っていると
「一口食べる?美味しいよ♥️」
差し出されたアイスクリームにヒソカさんを見遣ればフレンドリーな笑顔に遠慮して食べないのもどうかと思った