第169章 見えない未来

別れから逃れる様にゲートから離れようにもさっきよりずっと私の動ける範囲は狭くなっていた




彼は私の知らない世界を沢山見せてくれた

勿論そのひとつひとつ全てが楽しい思い出だけど

その中には必ず彼の姿があって

知らなかった彼の愛しい素顔を沢山知った

ソファーで気だるそうに長い脚を組み替える仕草や長い髪をかき上げる仕草、首を傾げる可愛い表情や呆れた溜息、全てが愛しくて大好きで

彼の入れるコーヒーの香りとか身体を丸めて眠るあどけない姿とか

触れれば温かい体温や唇


以前よりずっと近く深く

きっとこの世界でも一番彼を知っているのは私だと自惚れたりした

私は本当に幸せだと何度思っただろう


彼と過ごした日々が走馬灯の様に頭を巡る





大好きで大切で愛しい彼


いっそ出会わなければなんて不毛な事は思わないけれど
何故生まれた世界が違ってしまったのだろうと何度も思った


私達は普通の恋人と変わらない平穏な日々を重ねて夫婦になった筈で

その時確かに見えもしない永遠を誓った筈なのに


一緒に歳を取りたいという私の願いは……………



彼の傍にいられるだけで私は幸せなのに





遂にゲートは異物を吸い込む様に強力な引力で私を引っ張り始めた




「待って………！待ってよ！！」