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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第169章 見えない未来







ゲートの前に荷物を置いて三角座りで見上げる






……………これが開いてからどれくらい時間が経ったのだろう


私はぼんやりとしたまま数回目になる電話を無心で掛けた



わかっている


彼は仕事中電話に出ない


シンと静かな部屋は夜の静寂に包まれて其れを誤魔化す様に親方の回し車が賑やかに鳴る



部屋は全部見て回ったけれど本当に忘れ物は無いだろうか……なんて考えてから

ふと落とした視線の先で足元がスリッパのままだと気が付いた



私は一体何をしているんだろう………?


フワフワとし気持ちのまま靴を取りに行こうと数歩足を進めた所で



「……ねぇ、なんで………?」




堰を切ったみたいに両目からポロポロと涙が溢れ出した


ぐちゃぐちゃに歪んだ視界には何時もの様に彼と過ごす部屋が見えるのに

私の身体は見えない壁に阻まれる様にある一点からそれ以上進めなくなっていた



「なんでよ………!!」



叫びながら力一杯踏み出してみても全く進む気配も無く


私はその場に崩れ落ちた


現実なのだと理解するのが怖くてただ悲しくてまるで夢を見ている様な気持ちでいた私は今漸く別れを感じたのだ




せめて最後に一目彼に会いたい

声を聞きたい



すっかり使い慣れた異世界のスマホは呼び出し音を繰り返す


………彼がここに帰った時、私は居ないのだろうか



だとしたら次はいつ会えるのだろう……………?




「お願い"出てくだざいイルミさん」




不明瞭な私達の未来が黒く染まって行くみたいだ


部屋には嗚咽混じりの泣き声が響いて

胸が苦しくて身が裂けてしまいそうに痛い






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