ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第169章 見えない未来
キラキラと光り輝くゲートがリビングルームの真ん中に忽然と現れた
途端にドキリと嫌に鳴った心音は現実を認識出来ないままに身体を巡る
入浴前には無かった筈の扉は異質な存在感を放ち、異世界へと繋がるゲートであると直ぐにわかった
だって、あの日あの時彼を消してしまった扉とそっくりそのまま同じで
私が不安を抱きながら一歩を踏み出したあの時の物と同じだったから
「…………ちょっと待ってよ……」
漸く漏れた声は震えて広いリビングにポツリと落ちた
まだ数日
あと数日
私がこの世界にやって来た日付には早いじゃないか
スマホを拾い上げて彼へ電話をしてみたけれど虚しく機械音だけが鳴って
私はいそいそとベッドルームの親方の元へ向かった
彼はやはり不明確な予定を私には教えてくれなくて
いつ仕事が終わるのか昨夜も教えてはくれなかった
ケージ近くに纏めた荷物をリュックに詰めて忘れ物が無い様に広い部屋を見て回る
酷く冷静に思えるけれど
本当は自分の身に何が起きているのか受け入れ切れずに今の状況を俯瞰で見ている気分で
今起きている事や自身の行動がまるで他人事の様に思えた
床に落ちたままのキツネグマを拾い上げてリュックに仕舞い込む
さすがにガウンのままじゃ街中は厳しいし、着替えをしないと………なんて考えながらも現実味はさらさら無くて
Tシャツに腕を通しながらも、何故帰る準備をしているんだろう……?なんて不思議な気持ちになる
親方とリュックを身近に置いたままドライヤーで髪を乾かしながらぼんやりと眩いゲートを眺めてみても
やはり私の身に起きている出来事には思えず
気が付く頃には遂に手持ちぶさたになっていた