ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第167章 夕焼けが眩しくて
調べて目星を付けていたカフェは予約していなかったけれどすんなりと席に付く事が出来て
窓際の席にすっかり傾いた西日が眩しく差し込んでいる
「アイスコーヒー。」
「アイスミルクティーお願いします」
厨房に消える店員さんの背中を見送って視線を戻せば
キラキラと輝く茜色の世界に彼は瞳を細めていて
その何気無い自然な表情に彼が目の前で生きているという当たり前の事を痛感する
…………私は近頃夕焼けが嫌いだ
1日が暮れてしまうのがどうにもやるせなくて苦しくなる
変にノスタルジックになってしまうのだ
楽しかった思い出を探る様につい数時間前に過ぎた時をスマホに映して眺めれば
「俺にも見せて。」
と愛しい声が呟いた
今朝ワクワクとした気持ちで巡ったパークシティの景色と其所に映った嬉しそうな私の姿
傾けて見せれば彼は僅かに無感動な表情を緩めた
「楽しかったですね!」
「そうだね。」
「ありがとうございます!」
「別に。」
届いたミルクティーのストローをくるりと回して一口喉を潤す
どうにも落ち込んでしまって落ち着き無く脚を組み替える私の代わりにグラスが汗をかいて滴を垂らした
暫く続いた重たい無言を
彼は只の静寂に変えた
「綺麗だね。」
今の私とはまるで真反対の感想に顔を上げれば沈み行く夕陽を漆黒の瞳が見据えていて
「沙夜子と出会ってからそう思うようになったんだ。」
秘密を明かす様にひっそりと教えてくれた彼の言葉は私の胸に深く響いた
「それは嬉しいです、綺麗ですもんね!」
このまま終わって欲しくない
そんな願いすら眩ませる様に明るい夕陽
視界がゆらゆら歪んでいるのはきっと眩しさのせいだ……なんて言い聞かせて
情けなく笑った私にセピア色に染まった彼は何を思ったのだろう