ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第167章 夕焼けが眩しくて
私達のいる階は飲食店ばかりが寄り集まったエリアなのだが
ランチタイムの終わった店が目立ち残されているのはカフェばかりだった
勿論カフェでも食事は出来るけれどお昼とは別にカフェブレイクを考えていた私にとってカフェ被りはいただけない
なんて我が儘な思考だけど崩れてしまったプランを持ち直そうと必死だったのだ
懸命に店を覗き見ては肩を落とす事を繰り返し
私達が行き着いたのはファミリーレストランだった
「…………えっと、ここでも良いですか……?」
当初の予定から大幅にズレた大衆向けの所謂ファレスは他の所でも見掛けた事のあるチェーン店だ
そもそも予約していたレストランもランチメニュー1300円くらいのお得なお店なのだが
ファミレスとは雰囲気が違う………ッ
ゴクリと唾を飲み込んだ私に淡白な声が降ってくる
「別に何でも良い。」
「じゃあここで!」
私は即座に彼の厚意に甘えさせて頂く事にして扉を開いたのだが
安心感のある店内を見渡して心底複雑な気分になってしまった
注文を終えてから彼は隣にあるドリンクバーをじっと見ている
きっと物珍しいのだろう
…………本当ならお洒落な雰囲気の中彼とランチ出来ていたのに………
別にファミレスが悪い訳じゃない、寧ろ安くて美味しくて最高だ
庶民の私にとってはホッとするお店なのだが
以前の私ならば彼とファミレスに行くのに何の戸惑いも無かった
しかし彼の世界で彼と過ごす内にゾルディック家という高貴な家柄をひしひしと実感してしまって
そんな彼をファミレスに……私は一体……なんて妙な罪悪感を感じてしまったのだ
普段ならきっとここまで思わないだろう事も予約を台無しにしてしまった何とも言えない後悔から色々考えてしまって
テンションは目に見えてどんどん落ちて行く
家族連れや老若男女沢山のお客さんで賑わいを見せる店内
ドリンクバーを利用するお客さんが大勢私達の隣を行き交っていて
その様子をじっと眺めていた彼は大きな瞳を此方に向けた
「ねぇ沙夜子、あれは何?」
無表情に単調な声ながら普段より無邪気に見える彼は静かに私の返事を待っている