ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第167章 夕焼けが眩しくて
(………………レストランの予約何時過ぎてるやん………ッ)
…………最悪だ……………
私が予約していたのは所謂お洒落な雰囲気のバルみたいなお店
店内は緑を散りばめた爽やかな内装で小物までコジャレたピザが美味しいと散々口コミで読んだ
今日の為に調べに調べてランチタイムのギリギリであった13:30に予約してあったのに…………
最後のエリア迄十分堪能出来ている事だけが本当に幸いだった
半場放心した様に見上げれば無表情ながら事態を把握してくれたらしい彼と目が合う
「何て所だっけ。」
「アルコバレーノです………」
「確かノースエリアの5階って言ってたよね。」
「はい」
気持ちが焦るばかりで無駄にウサギちゃんを撫で回している私だがそうしている時間も勿体無い
一方、長い髪をかき上げながら腕時計をチラリと見た彼は「急ごうか。」と淡白に呟いた
頷いた私の背中に腕を回した彼は流れる様に人波を縫い歩く
急く気持ちの狭間でまるで風みたいだ、なんて思ったりして
薄暗い通路を抜けて自動ドアを潜れば燦々と太陽が照らす炎天下
彼は軽々と私を抱き上げると「しっかり掴まってなよ。」と単調に告げた
力強い腕に逞しい胸板
そして何より彼の中性的で端正な顔立ちからは想像も出来ない軽やかさで成人女性を抱き上げる所作……………
ざわざわと賑やかな雑踏に当然私達は道化みたいに目立っていた
焦りと胸キュンと羞恥と戸惑いが一斉に沸き上がると人は頭の回転が著しく鈍るらしい
降ろしてください、という言葉が出てこない
何も言えぬままにやんわり首元に抱き付けば途端に目まぐるしく景色が流れ始めて私はぎゅっと目を閉じた
ジェットコースターのヒュンを走りで体感出来るらしい彼のダッシュは超人技である
従って私みたいな凡人には恐怖なのだが
………彼はミスをした私の為、私達の昼食の為走ってくれている………という真実に目を向けてしがみつく事数分
通常なら絶対にあり得ない程早く私達はレストランの前へやって来ていた