ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第167章 夕焼けが眩しくて
水族館エリアを抜けた私達は水辺の生物と触れ合う体感ゾーンへやって来た
個性的で可愛いメルヘンな雰囲気から一変して黄色や緑の壁紙や凝った内装で好奇心を駆り立てる
彼は然程興味無さそうに一歩引いた場所で見ていたけれど私は嬉々として触れ合いに勤しみ
「イルミさんも一緒に!」
気持ちをそのままに笑顔を向ければ彼は満更でも無さそうに付き合ってくれた
元気に泳ぎ回る小魚や浅瀬の生物が放たれた水槽にて彼が何故じっとヒトデをわし掴んでいたのかは謎だが
楽しいですか?と尋ねれば「まぁ。」なんて妙に上からなコメントを頂き
「触れ合った生き物でどの子が一番可愛かったですか?私ピンクの魚!」
「何も可愛くなかった。」
「………え、あんなに触ってたのに……?」
「そういう場所だから触ってただけ。」
「……ふふふ」
最後迄彼は彼らしいまま水辺の生物ゾーンを制覇した
次いで私達がやって来たのはアニマルエリア
やはり一貫して見せる事に重点を置いた空間は素晴らしいものだ
また楽しさに弾む胸を抱きながら歩き出す
都会故にスペースは限られていて以前彼と訪れた動物園や水族館みたいに広大では無いけれど
其れをカバーする様に動物達がクリアに見えるガラス壁と工夫された造りで迫力満点の近距離から姿を観察する事が出来る
「何か凄いですね……!」
「うん。」
自然と人工物が不思議と融合した様な世界観は今までに無く、未知の森林を冒険している様な気分に成る
頭に探検隊をぼんやりイメージしながらもズンズン進む私だが彼の大きな手に捕まって危うく転けそうになった
色々な意味のドキドキが混ざりながらも驚いて振り返れば
彼は無機質な雰囲気のまま伏し目がちな瞳で私を見下ろしていた
「もう少し落ち着いて歩きなよ。」
なんて呆れた声で溜息を吐いた彼を前にブワリと頬が熱くなる
きっと本当にそのままの理由で私を捕まえたのだろうけど気だるい眼差しが何とも色っぽく見えてしまって……
そんな彼に触れられているのだと思えば手首が爆発しそうだ
「………行くよ。」
まるでリードを引かれるみたいに腕を引かれた私は俯いたまま彼について行く
彼はそんな私の様子に最早慣れ切っていてチラリと盗み見た横顔は実に涼やかだった