ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第166章 デート日和
「うわぁ!綺麗ですよ!」
「うん。」
なんて味気ない返事を返す彼だがその表情はいつもよりあどけなく瞳が輝いている事を私は知っている
ニヤニヤ緩む頬をそのままに私は彼の手をぎゅっと握った
彼はそんな私にチラリと視線を落とした後に握り返してくれて胸がキュンと高鳴る
水族館と謳うだけあり、しっかりと魚達の生態も紹介されているのだが
普段主役にはなれそうにない小魚中心に展示された此処は知らない生き物で満ちていた
「………この子よく見ると……ちょっとあれですね……」
「破れた靴下みたい。」
「ちょっ……ふふふ……」
其れは彼も同じだったらしく物珍しさに大きな瞳が目まぐるしく動く可愛い横顔を水槽の反射越しで見詰める
彼も私と同じ気持ちなんだと思える今この時がいつまでも続けば良いのに………
あと何度彼と同じ景色を見られるのだろう
時間があっという間に過ぎてしまう事が恐ろしい
途端にズキリと走った胸の痛みに俯いたと同時
「見て、沙夜子がいる。」
彼の柔らかい声色が耳に響いて顔を上げれば口元を緩めた彼が希薄な表情に笑みを浮かべて先の水槽を見据えていた
私だと彼が言った水槽には何ともとぼけた顔をしたお魚がのんびり泳いでいて
「うーん……ちょっと違いますね」
「そう?沙夜子っぽいじゃん。」
可愛いと言うより間抜けな魚を私っぽいだなんて……………
少しふて腐れる私に彼はポツリと呟いた
「俺は好きだなこの魚。」
ドキドキと高鳴る心臓と熱くなった指先
落ちて行く気持ちを彼に救われた気がした