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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第165章 涙と汗が交ざる時







再びお皿に向き合った私は今どんな顔をしているだろう……


普段に無い言動から変に勘繰ってしまう

彼は最後の思い出を作ろうとしているのではないかと


ずっと解っていた

ひしひしと感じていた

別れの時が近いのだと

だけど今の瞬間で強く実感してしまって目の前が真っ暗に成った



天気予報に抑揚無く笑う彼の声を隣に聞きながら進めた食事は味気無く喉を通り過ぎたけれど


「沙夜子」


そう彼に名を呼ばれた途端に幸せで狂ってしまいそうになった


私の目には確かに彼の姿が映っている


「沙夜子の好きそうな番組がやってるよ。」


愛しい横顔が見詰める先には動物番組が流れていて私は泣きそうになりながら笑った



「ほんまや!絶対見る!」


「はいはい。」



私は動物番組をぼんやり眺めながらも必死に今を見詰めていた


悲しみに蝕まれて身が裂けそうに痛む胸

だけどそれでは折角彼と過ごしている今この時が一瞬にして過ぎ去ってしまう


まだ悲しむには早い



(今は一生で今だけ、この瞬間瞬間を最大限に噛み締めて行こうぜ!!!)



そう言い聞かせて画面を凝視する私に


「今日は随分静かだね。いつもは何かと騒がしいのに。」


彼は気を抜いている風に細めた瞳を向けた



「………あ!ちょっと寂しかったんですか今!」


「は?」


途端に怪訝に歪む顔にニヤニヤと頬が緩む



「もぉ~早く言ってくださいよ素直じゃないんやからぁ~、私の実況が無いと物足りひんなって思ってるんでしょ!」


「馬鹿なの?そん「きゃー!!見てくださいよ可愛いフワフワや!!」


「……………。」



くよくよと嘆くのは今じゃない


楽しくするのも自分の気持ちひとつじゃないか







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