ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第165章 涙と汗が交ざる時
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彼が帰って来た
私は嬉しさを隠さずに馬鹿みたいな笑顔で彼の胸へ飛び込んで静かに決心を固めた
彼から連絡が来た時には舞い上がったけれど只尻尾を振って待っていた訳じゃない
彼を襲う女豹になる為の情報収集に勤しんでいたのだ
彼を受け身で待っていては駄目
そんな決意をしてぎゅっと抱き付く私の肩を彼がやんわりと離す
見上げた先には大好きな彼の姿
いつものお人形さんみたいに綺麗な顔で此方を見ていた
「変わりは?」
「ありません!」
なんて普段の他愛ない会話を交わしている内にあっという間に夕飯に成った
ホテルのシェフが腕を奮った豪華なコースを彼は全て一度で出せと言う
広いテーブルについて隣り合った私達の前には湯気を上げたお料理達がズラリと並んだ
「いただきます。」
「いただきます!」
途端にカチャカチャと鳴るナイフとフォーク
「雨なんだ……面倒だな。」
なんて明日の天気予報にポツリと独り言を漏らした彼をチラリと盗み見る
「……明日もお仕事ですか?」
「まぁね。」
「………そっか」
「15日休み。」
「………えっ」
私は口に運びかけていたフォークをそのままに彼を見た
彼が私に事前スケジュールを教えてくれる事なんて滅多に無い
それだけ不規則な仕事だろうし確実に解らない事は絶対に教えてくれないのだ
だから私は間抜けに口を開いたまま彼を見ている
「何処か行きたい場所でもあるなら連れて行くから考えてなよ。」
チラリと流されただけの視線が一瞬交わって私は遅れて小さく「はい」と答えた