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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第164章 見えない冒険








静かなBGMを掻き消す断末摩がスピーカーからでかでかと響き


大画面で髪を振り乱す女性の霊が有り得ない動きで迫る姿に私の身体は防衛本能を発揮した



「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」



気が付けば手に持っていたワイングラスもそのままに私はソファーを跳び上がり背もたれの後ろに隠れる様に着地していた



バクバクと耳にもうるさい鼓動は恐怖心と瞬発的な運動に騒ぐ



不意打ちだった


オバケのオの字も見えないリアリティーある展開から突然の貞子テイストは駄目だろう……


ずっとしっとり流れていたバックの音楽は何なんだ…………!!!


お陰で手元はびちゃびちゃだ


何だか騙し討ちに合った気分でソファーを覗けば


何故か其所に彼の姿は無く



ソファーから少し離れた場所で大きな瞳をクリクリと見開いた彼は針を構えて立っていた



「イルミさん………?」




恐る恐る声を掛ければ戦闘体制を解除した様に下がった両手



ほの暗いエンドロールが流れる部屋で暫く見詰め合った私達



彼はポツリと「びっくりした。」と漏らした



「……ごめんなさい」


「……いいけど。」


彼はどうやら突然跳び上がった私に驚いたらしい


私自身も秘められた身体能力に驚いたがそれよりも


私がやらかした事なので全力で噛み殺しているが


彼が驚く事自体かなりレアな事で

そしてその姿はまるで飼い主のくしゃみに驚く猫ちゃんみたいだった


可愛い…………ッ!!!!!!



吹き出してしまいそうな笑いを必死に耐えて平然とソファーを拭う私に未だクリクリの瞳を向ける彼が可愛くて仕方がない



「さっきの沙夜子凄く跳んだね。」


「………そうですね……びっくりして」


「誰かに念で操作されてるのかと思ったよ……一瞬だけど。」


「ぶふぅっ!!あはははは」


「……何。」


「い、いえ……ふふふ」



彼はその後も暫く無表情ながら真ん丸のおめめで此方を見ていて

新たに知る彼の姿に私は懸命に頬の内側を噛んだのだった







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