ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第164章 見えない冒険
テーブルに並んだのはルームサービスで頼んだお料理
そしてカチンと鳴らしたお酒のグラスを傾ければ漏れる至極の溜息
昼前から美味しいお酒を嗜み、彼と二人過ごせるなんて素敵が過ぎる……なんて今の幸せを噛み締めながらも
巨大スクリーンは鮮やかな映像を映し出す
先ず始めに私達が選んだのはミステリーホラー物だ
ホラーと言っても私が苦手なオバケの類いは登場しないらしいパッケージから快諾したのだが
如何せん雰囲気が暗い
「ん~ワイン美味しいです」
「飲んでばかりしないで食べないと酔うよ。」
「はーい」
上品な所作でチーズバケットを口に運ぶ彼は真剣に映画を見ている様で真っ直ぐスクリーンを見詰めたまま呟いた
主人公とその友人がある事件に巻き込まれる事から展開して行くストーリーで時折グロテスクな表現がある
絵画に埋め込まれた悲しみの嘆き、なる宝石の存在を知り謎を解きながら目的を目指す……と言った如何にもな内容なのだが
ミステリー要素も強く考察意欲を駆り立てる構成になっている
大画面から静かに流れる映像にいつしか引き込まれて私は夢中で噛り付いていたのだが
余りにも難易度の高い謎解きの数々に唸り声しか出て来ない
「え、うーん……でもここで手鏡持ってても意味無くない……?」
誰かに伝えるとしたら画面の主人公になのだが無意識にポツリと漏れた声に
「いや、今必要だよ。」
彼は静かに言を返した
「えっ……でも……んー……?」
「足手まといの救出を考えるなら手鏡は必須でしょ。非効率だけどあいつが何らかの鍵を手に入れていた様に見えるから結果最短ルートだと言える。」
「なるほど……」
私のチンプなオツムでは説明が出来ないが彼はお話の一連の流れを把握し、先を見据えている様だ
彼の説明がストンと腑に落ちて頷けば再び画面に戻る眼差し
私には高度過ぎるミステリーの数々に……………少し飽きてきた……
しかしチラリと盗み見た彼の横顔は珍しく真剣で心無し楽しそうにも見える
彼程の明晰な頭脳を持っているなら楽しめる内容なのだろう
……私達は本当に何処もかしこも似ていないなぁ……なんて思えばげんなりしてしまったけれど
彼が楽しめているなら騒がない方が良いだろうと兎に角食事に専念していたのだが