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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第163章 海を見に行く話







開いた扉から吹き込む潮の匂いと波の音






「イルミさん………?イルミさん………イルミさん………!」




溢れそうな涙が視界をゆらゆらと歪ませて情けない声で愛しい名を呼べば



車の死角に隠れて浜辺で海を眺める彼を見つけた



砂に足を取られて早く走れない


だけど私は彼目掛けてとにかく走った



あと少し、もう少し


切れる息を吸い込んだ時




潮風に流れる長い髪を緩く撫で付けた彼はゆっくりと此方を振り返った


空も海も砂浜もキラキラとオレンジ一色に輝く世界で彼の瞳に私が映る


世界中で一番私の大好きな人




「よく寝てたから先に見てた。」



優しい声色が耳に流れた途端に私は彼の胸に飛び込んでいた


彼があまりにも綺麗過ぎて本当に其所にいるのか解らなかった


しっかりと身体を抱き止める胸に顔を埋めて確かめる

ドクドクと落ち着いた心音が優しく私を包んでおずおずと顔を上げれば


彼は遠く水平線に沈む夕陽に大きな瞳を細めていた



「…………勝手に置いて行かないでください……」


「だって沙夜子起きないから。」



私は泣かなかった


今私は本当に心底幸せで


触れる温もりがまだ傍にあるのだから泣かなくて良いと思った





「………あ!相合い傘描きたい!」


「何それ。」


「…………何って言われると難しいですね……何か私達ラブラブ~みたいなやつです!」


「……………。」


「特大のやつ!」



彼は特に何も言わず私が相合い傘を描くのを眩しそうに眺めていて

私は名も知らぬ砂浜に大きく私達の名前を記した



その後足を浸けて遊んだりもしたけれど何よりも

沈んで消える太陽をずっと見詰めている彼の姿が本当に綺麗だった







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