ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第163章 海を見に行く話
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それからの私は彼の魅力にうっとりと夢見心地のまま車に揺られ
人間の生理現象によって現実界へと引き戻されていた
「………イルミさん私ちょっとお花摘みに行きたいです」
私は尿意を催したのだ
スラリと高い鼻筋、気だるい瞳、形の良い唇………ハンドルを握る腕も逞しく、しかも長い……何て格好いいんだろう!!!!とうっとりしていたものだから妙に恥ずかしかった
トイレに行きたいと言うよりは響きが良いと思い選んだ言葉
どういう訳か知らないが女性がトイレへ行く意志を伝える台詞として知っていたお花摘み
教養ある彼ならば知っているだろうと発したのだが彼は怪訝な表情を浮かべた
「は?」
この反応は意味を理解していない………
「何、突然。」
妙に照れたせいで変な感じになってしまった
しかし陣は直ぐそこまで迫っている
えっと……なんて言い淀む私に向けられる観察の視線に私はニッコリ微笑んだ
彼にメロメロで気が付くのが遅れたが私はまぁまぁピンチらしい
「膀胱が限界突破しそうです」
「………………近くにあった筈だから待って。」
かりそめの微笑みと冷や汗を浮かべる私に少し目を見開いた彼が何を思ったかは解らないけれど
ぐんと上げられたスピードにより私は間一髪で事なきを得た
海を目指すには山越えするらしく車は山間を走っていて絶望的に思えたけれど彼の言葉通り公共施設が存在した
慌てていたので一目散にお手洗いへと駆け込んだ私だが外へ出てみれば其処は雰囲気こそ違えど私の世界で言う道の駅の様な場所なのだろう
広い駐車スペースに木造校舎を洋風にして小さくした様なレトロな建物とパステルカラーの可愛い販売ワゴン
そして外で飲食出来る木製のテーブルスペースは沢山の人で賑わっている
山中故にドライブ中の人が休憩しているのだろう