ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第163章 海を見に行く話
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彼の僅かな違和感はほんの一時の事だった
もしかしたら私達の行く末を………なんて考えては不安に押し潰されてしまいそうで必死に取り繕って
足りないおつむであれこれと深読みしていた私だが
今の彼を見る限り過敏になり過ぎた私の勘違い
もしくは頭に叩き込んだ目的地迄のルート確認だったのだろう
現に今私の隣にいる彼はちょっぴり不機嫌である……
ヨークシンの街中を抜け住宅街を抜けて私達は随分と田舎町へとやって来ていた
見渡しても海の気配は無く
立ち寄ったのは一軒の洋食レストラン
辺りに店が無いからか、それとも名店だからなのか店の前には少しだけ人が並んでいた
照りつける日差しにダラダラと汗を流す私とは相反して汗ひとつかいていない彼は実に凛とお行儀良く待っていたのだが
店に入る前にメニューを聞かれていよいよ私達が次の番に迫ってから一向にお呼びが掛からないのだ
そして彼はちょっぴり不機嫌に成った
別にむやみやたらに暴れたり舌打ちをして貧乏揺すりをしているなんて事は無いが
無言のまま腕を組む彼は得も言えぬ圧を放っている
そして、これは先程気付いた事だが私が「暑い」と溢した時から彼は少しでも私が影に入れる様に然り気無く立ち位置を変えてくれていた
もしかしたら今までも気付かない内にそうしてくれていたのかもしれない
彼の優しさは本当に然り気無いのだ
正直どこまで優しいのだとドキドキしながらも自然と口から漏れた言葉に
「まだですかね……?暑い……」
彼はボソリと小さな呟きを落とした
「沙夜子が死んだら全員殺す。」
「!?」
「…………。」
「………さすがに死にませんけど……」
「一般人は貧弱だから熱中症なんてやつでも死ぬんだろ。」
「………んん、まぁ………」
「殺す。」
……………………可愛い……………。