ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第163章 海を見に行く話
車はビル街を抜けて閑静な住宅街を行く
名も知らぬ花が軒先の花壇で目一杯太陽を浴びて気持ち良さそうに揺れている
彼に連れられて色々な街を見て来たけれど何処も私の知る風景とは違っていて感慨深い
時折交わるミラー越しの視線
彼の姿を焼き付けたくて運転席に目を向ければ
彼はいつもの様に片手でハンドルを握り淡白で美しい横顔を覗かせていた
季節故に露出された腕は男性的なのにシートに落ちている手はピアノが似合いそうな繊細さがある
「イルミさんって絶対ピアノ似合いますよねー……」
なんて無意識に漏れた声に彼は眉の仕草だけで反応を示すと
「似合うかどうかは知らないけど一応弾ける。」
薄い唇から衝撃の新事実を紡いだ
(ピアノ………弾けるの?!?!?!)
私は暫く鳩が豆鉄砲をくらった様な顔をしていただろう
「えっえ?!弾けるんですか?!」
「うん。」
「なんで?!」
「一通り色々やらされてたから。」
「………知らんかった……」
「聞かれてないから。」
彼は一流の貴族様である
彼の言う色々には本当に多種多様な事が含まれているのだろうけど
本当に彼は自分の事を話さない…………
きっと面倒だとかそんな理由では無くて本当に私が聞いていないから話していないだけなのだろうけど
逆に私が聞いたら何でも答えてくれるのだろうか………
「……因みに持ち曲はどれくらい……」
「さぁ、クラシックなら一通り。」
「イルミさんの頭の中ってどうなってるんですか……」
「見たこと無いから知らない。」
事も無さげに言った彼だが私の反応に少し穏やかな雰囲気を見せる彼に本当は今何を考えているのですか………とは聞けなかった