ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第162章 夕暮れの遊園地
やはり彼は彼で周囲の視線等は至極どうでも良い様だが彼自身の感覚的にメリーゴーランドに乗るのは不恰好であると感じているのだろう
彼は大概の事に付き合ってくれる優しい人だ
しかし彼が拒む理由を知った今、これ以上我が儘を言うのもどうかと口を瞑れば彼は大層大きな溜息を吐き出した
……………やばい………ウザイと思われたかもしれない…………いや……其れを思うには、かなり今更な気もするが………
チラリと様子を伺えば無機質で作り物の様な横顔は先程の事等無かった風に平然としていた
彼は素晴らしいくらい切り替えが早い
自分の暴走を反省しながらもそんな彼を染々好きだと実感する
私に合わされて随分とのろまな歩調で無言のまま進む私達
特に雰囲気が悪いとか居心地が悪いなんて事は無いけれど少し気分を変えようと辺りを見渡せば射的のテントが近くに見えた
「イルミさん!」
「んー。」
「あれしてみませんか?」
小ぢんまりとした赤い布テントは屋台の様な雰囲気で指差せば彼はすんなりとその方向へ足を進めた
「いらっしゃい!」
「一人分。」
「はいよ!」
ぬいぐるみや小さな玩具、お菓子なんかが景品で並ぶ中私が狙ったのはリボンで縛られたお菓子の詰め合わせ
「あれ美味しいですよね!見ててください、落として見せます!」
「はいはい。」
五発ある弾を詰め込んで私は意識を集中させた
気分はさながら凄腕スナイパー!
…………まぁ…………結果としては惨敗だった訳だが
意気込んだ分少し恥ずかしかったが誤魔化す様に笑った私の銃を彼はサラリと取り上げて
その流れで小銭を渡すとおじさんから弾を受け取って手慣れた様子で詰め込んだ
あまりにも自然にパン!と小気味良い音が五回響いた後
ドサドサと棚から落ちた景品達
その光景に呆気に取られ固まるおじさんに彼は間の抜けた声で「早く袋に詰めて。」と告げて
私が狙っていたお菓子は勿論ぬいぐるみからよく分からないキャラクター物まで彼に掛かれば本当に瞬殺だった