ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第162章 夕暮れの遊園地
「……沙夜子は変な物が好きだね、乗りたいなら乗ってきなよ待ってるから。」
「違います、一緒に乗りたいんです!」
「どうして。」
私のパッションが伝わったのか妙に粘る私の様子にじっとり向けられる視線
腕組みした彼の腕を無言で引っ張ってみてもまんじりとも動かず私のスニーカーがジャリジャリと音を立てただけだった
不動明王のごとく微動だにしない仁王立ちを前に私はゴクリと唾を飲み込む
「……寧ろ私は乗らなくて良いんですよ。イルミさんが乗ってください!」
「は?」
「私はあの可愛いお馬さんに乗ってるイルミさんが見たいッ!!!」
「……………。」
渾身の大声を辺りに響かせた私に周囲から注目が集まった
彼はむっつりと口を閉じたまま「この馬鹿何考えてるんだ」と眼力だけで言っているが
彼ならば無理矢理にでも私を引き摺って行ける筈なのにそうしないと言う事は理由によっては聞いてやらない事も無いのでは……なんて淡い期待
「絶対の絶対に見たい」
「何なの?馬鹿なの?理解出来ない。」
「……だって可愛いじゃないですか」
「………あのさ、俺の事をカワイイなんて言う感覚の狂った奴は世界中で沙夜子だけだよ。」
「きっと皆もイルミさんを可愛いって思います!」
「それが本気ならイカれてる。沙夜子のそれって本当に目?ちゃんと見えてる?誰も思わないしそもそも周りなんてどうでも良いんだよ。」
グサリグサリと心臓を抉る辛辣な言葉に私のHPは0に近い
しかし彼の台詞から何故メリーゴーランドを嫌がっているのかはニュアンス程度に察する事が出来た