• テキストサイズ

ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第160章 額の中の物語








「これですか……」


「悲劇の像。」


………悲劇の像、見た目にぴったりな名前の付いた像は悲痛に髪を掻き乱している様にも見える


「………何があったんですか……?」


「さぁ、この彫刻家は無名のまま死んだからはっきりとは残っていないけど一説には妻を亡くしたとか財産を奪われた、なんて言われてる。」


「……へぇ……」



指のシワや爪、髪の一本一本細部迄丁寧に彫られた悲劇の像からはこの彫刻に込められた思いや熱を感じて

それなのに彫刻家が込めた思いやその本当の理由を誰も知らないなんて悲しい様な感慨深い様な不思議な気分になった


それから彼はポツリポツリと色々な美術品の解説をしてくれたけれど彫刻の多くは何もわからないまま今に形を残していた



次いで見えて来たのは絵画のエリアだった


彫刻の重厚感とは違うカラフルな色が空間を彩る

大小様々な額の中に飾られた其れは情景や景色、はたまた幻想とも取れる物迄色々な作品が皆特有の世界を展開している


そんな中私の目に止まったのは模写の様に鮮明なタッチながら幻想的な人物が登場する絵だった


緑に囲まれた湖は透き通り触れれば冷たいのではないだろうか……なんて思うほど現実的なのに其処では蝶々の羽根を持つ小さな妖精が水遊びをしている


楽しそうでいて神聖な様な不思議な雰囲気を持つ絵画に私は一瞬にして心奪われた


画家ごとにブースが別けられている訳では無く点在する物の中で度々現れるその画家の絵画は私にしてみれば逸脱した存在感で

美術に関して明るいとは言えない私でも直ぐに見分けが付く様になっていた



「私この人の絵好きです」


「ふーん………確かクルフトとか言う画家だっけ。」


「クルフトさんですか、凄い綺麗な絵ですね!」


「ヨークシン郊外にいた女性画家だよ、歳は20……この作品は16の時の物だよ。」


「……えっ!?今も生きてるんですか!?」


「いや。」





/ 1349ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp