ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第160章 額の中の物語
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私達は無事美術館へと辿り着き
彫刻が沢山展示されているコーナーを歩いていた
さながらホワイトハウスみたいな出で立ちの建物を前に敷居の高さを感じてこんな格好で大丈夫かと思ったが
同じ様にジーパンにTシャツ、スニーカーとラフな格好の彼は全く気にしていない様子だった
…………いや、彼はラフな格好に見えるが彼自身が醸し出す気品で帳消しなので参考にならない
場違いなのでは……とオロオロする私は小心者かもしれないけれど辺りを歩く人は皆一様に身綺麗で
それだけで集団から外れる事を恐れる凡人は格式高さを感じずにいられなかったのだ
しかしそんな事を考えている間にも徐々に速度を落とす私の手を彼はしっかりと握り歩いてくれて
チラリと合わさった黒い瞳に「大丈夫」と言われた気がした
という訳で私は身成を気にする事を止めて純粋に今を楽しむ事に専念している
……………しかし圧巻だ…………
一口に彫刻と言っても見上げれば遠く天井に届きそうに巨大な物から掌くらいの小さな物迄本当に様々な物が展示されている
そしてその全てに言える事はこれでもかと繊細な彫刻が施されている事だった
私は美術品に疎くダビデ像を薄ぼんやり思い出せるくらいの知識しか無いのでいまいち対象がわからないけれど
この世界の彫刻は少なからず私の世界の物とは違っていて
人物の衣服には小さな花の柄が丁寧にあしらわれていたり繊細なレース迄もが全て石から削り出されている
彼に聞いてみれば約300年前の物からいつ出来たのか不明な昔の物迄混在しているらしいけれど
どれもその美しさを今に残す堂々とした出で立ちだ
「これなんて有名だよ。」
微かにクラシックが流れる広いフロアに彼の小さな声が響く
彼が見詰める視線の先を辿ればそこには膝から崩れ落ちた様に踞る男性の像があった