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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第160章 額の中の物語







ホテルにて待機していたタクシーで美術館へ向かった筈が土地勘の無いドライバーに違う場所に降ろされてしまったのだ


彼自身もしっかりとした地図を把握していなかった様で

そうと知った時の彼は実に不愉快そうに舌打ちを鳴らしてご機嫌斜めだった



「アイツ次会ったら殺す。」


「……いやぁ……それは……」



…………まぁ、気持ちはわからなくもない………

私一人だったら絶対殺さないにしても悪態を付きまくっているだろう

いくら土地勘が無くてもお仕事なのだからしっかり目的地に送り届けるのが常識だが……


調べて見れば現在地から徒歩10分、と歩けない距離ではなく私達は美術館迄のあと少しの道程を歩く事に成ったのだ


特に人通りが多い訳でも無く二人並んで目的地を目指す

そんな今この時もデートだと思えば私は楽しい気持ちで一杯なのだが

チラリと彼を見上げれば不機嫌そうでは無いものの随分と気だるそうで苦笑いが漏れる


私は一応釘を刺しておく事にした



「イルミさん」


「んー」


「……運転手さんもし次会っても殺したらダメですよ……?」



ホテルの下に待機していたのだからあの場所が持ち場なのかもしれない

となれば偶然彼と鉢合わせする可能性は十分で

もしかしたら新人さんで運悪く私達を乗せたばっかりに………なんて罪悪感で私の方が死にそうだ


彼の様子を伺いながらも抑止になればと紡いだ言葉に彼は溜息を吐き出した



「………わかってるよ。」


「……意外です」



彼と私の視線が交わった少しの沈黙の後




「感情で人を殺すなと教えられているからね。」


「……そっか」




プツリと途切れた会話の中で私が感じたのは何故か彼の気高さだった


"殺人"と"暗殺"の線引きはそういう所なのかもしれない


平凡に生きている私には本当の所はわからないけれど彼の言葉から暗殺者の気高さを垣間見た気がした






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