第160章 額の中の物語

06月25日


私がこの世界にやって来て残された時間が一ヶ月と成った

正確に言えば一年と言っても365日きっちりでは無く

彼はやって来たその日より随分と早く私の元を去った


つまり私達に残った時間はもう一ヶ月も無いのだと推測している


私は念能力者では無いし彼やクロロさんが言っていたみたいに念の気配なんて解らない

いつ元の世界に引き戻されるのか考えてはろくに眠れない日が増えた



そんな私が只時計を見詰めて過ごしているのは何とも奇妙な事に最初にセレブリティカルチャーショックを受けたホテル


壁は全面ガラス張り、大理石の白い床、出入口には室内植物園を構えるヨークシンの豪華絢爛な部屋だ


希望と期待、彼との再会に胸踊らせていた私がやって来た馬鹿みたいに広い部屋

まさか再びこの場所にやって来るとは思ってもいなかったがガルシア様という偽名が呼ばれ慣れている事だけは良かった


そんな場所で彼は多忙を極め部屋で遊べるありとあらゆる物で私を囲むと仕事に明け暮れている



チクタクと耳に付く時計の秒針に焦る気持ちと漏れる溜息


しかし同じだけ待っている事しか出来ないならばと気を持ち直した私を誰か褒めて欲しい




…………なんて………誰もいないのだが……………