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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第159章 夏の味のヒトコマ








私が見ていたのはレンガ造りの民家の隙間


所謂路地だ





私はあの路地からこの異世界へ踏み出したのだ



ありありと思い出す記憶に辺りを見渡せば
噴水の素敵な広場は変わらずそこにあった



丸い噴水の周りにはパステルカラーがキュートな移動販売車が停まっていて

風に靡く旗にはハンター文字で"かき氷"と書かれている


あの時の私はあの文字を読める事にどれだけ安堵しただろう

右も左も解らない世界でたった一人彼だけを探した冒険

たった数日と言われるかもしれないが私にとって命掛けの大冒険だった



完璧に読み書き出来る様に此方の文字を徹夜で勉強した孤独な日々



自然と吸い込まれる様に広場へと歩み出す


噴水を中心にした広場には一年前と変わらず多くの親子連れやカップルなんかが冷たいかき氷を求めてやって来ていた



何故か胸が熱くて切なくて視界が揺れる私に



「沙夜子はいつ此処に来たの?」


彼は全てを悟った様な静かな声を落とした



「………約一年前です」


「7月何日。」


「……7月25日」



ザァッと噴水の水が盛り上がる様に活気良く飛沫を上げて彼は何故か私の手をぎゅっと握った


溢れそうな涙をそのままに彼を見上げれば不思議な感慨が襲う

探し求めた大好きな彼と始まりのこの場所にいる事が心底不思議で

そして途方も無く幸せで訳もなく感謝の言葉を口走りそうにへにゃりと開いた唇



「それより暑いしかき氷食べない?」



其れを遮ってサラリと言った彼は太陽の眩しさに睫毛を僅かに伏せて可愛いワゴン車を指差した

風に靡くかき氷の文字


そう言えばあの日も今日みたいに真夏日で美味しそうだなぁなんて思っていた





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