ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第157章 キスの妄想は泡に消える
「あの………それより………舟は………?」
「粉々になった。」
「………………えぇ?!?!」
見渡せば湖の真ん中に浮かんだ私達
彼の背中越しに見えたのは木片を散らせて原型を留めない舟だった何かの残骸だった
木製の小舟は彼の与える未知のパワーを前に形を留めていられなかったのだろう
そしてそんな大惨事になってから少しやり過ぎたかな?くらいに思っているであろう彼………
…………………恐ろしい……………
すっかりびしょ濡れの髪を撫で付けながら近い距離に聞こえる声
「しっかり掴まっててね。」
「はい」
ぎゅっと抱き着いても彼の泳ぎに支障は無く緩やかに湖面を進む
冷たい水の中で密着した彼の身体は温かく不思議な感覚に陥ったのも束の間だった
「そう言えばこの辺かな、ガウランの生息圏。」
…………………ガウラン………………私はその名を聞いた途端に血の気が引いた
彼と訪れた水族館、私はその中でピラルクの様な黒い鱗の古代魚にゾッと鳥肌が立つような恐れを抱いていた
そして昼食時知らず知らずに気色悪い魚を口にした私は込み上げる吐き気と必死に戦ったのだ
ガウラン………あいつの水槽で泳いだら100万円……なんてもしも話をしていたけれど
そんな事が現実に起こり得るなんて誰が考えるだろう
しかも100万円貰っても嫌だとすら思わせたあの巨体が底の見えない水中に存在しているなんて思えば………
「覚えてない?あの黒い「もう嫌やぁ…………!!怖いぃッ!!」
子供も三度見レベルの大号泣を決めたのだった