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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第157章 キスの妄想は泡に消える








ギギギと軋む小舟

ザバザバと激しい水飛沫の合間に仰ぎ見た彼の姿は何故か楽しそうに瞳を輝かせた良い表情で

振り落とされぬ事だけを切に願った私だったが






「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」



小舟がメキメキと痛々しい音を鳴らした後に急にスピードを失った反動で容易く吹き飛ばされた私は悲鳴のお手本の様に辺りにその声を響かせた


逆らえぬ浮遊感に世界がスローモーションに見える


放り出された大気で見たのは何処までも晴れ渡る真っ青な夏空だった……………





「……ッモゴモゴッゴフッ!!」




………………死ぬ………………溺れ死ぬ…………!!!!!



小舟から放り出されたのだから私は当然湖に入水した


どれだけ深さがあるかもわからない湖の真ん中で溺れるなんて思っても見なかった

突然奪われた酸素にパニックでもがけばもがく程遠退く水面



何故こんな事になったのだろう……?




なんて絶望に染まる視界に映った彼の姿に必死に手を伸ばせば彼は私をしっかりと抱き締て一気に水面へと顔を出した



「ゲホッゴホッ!!はぁはぁ……!」



酸素を肺に入れながら咳き込む私の背中を擦った彼は小さな声で謝罪を口にした


いや………そもそも一体何が起きたのか



たった数十秒の内に激変して行く時の流れに唖然とする私に彼は淡々と言を紡ぎ始めた



「ほら、以前砂漠でボートに乗った時は人がいたし嫌がってたけどここなら沙夜子も気にせずに楽しめると思ってさ。……ジェットコースターみたいだったでしょ?」



…………つまり彼は以前の出来事を人目に触れるから私が嫌がっていたと解釈していたらしい

そして人目が無いこの場所なら素直に楽しめるだろうと………結果振り落とされた訳だが…………


私を軽々片腕に抱きながら泳ぐ彼に乾いた笑い声を上げた私はすっかり脱力していた


………………彼のちょっとしたサプライズは命掛けだが……………怒るに怒れない私は彼にとことん甘い………






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