ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第156章 ある日の二人
次いで取り出したのは実用性の欠片も無い代物で私は自分の馬鹿さ加減に思わず鼻で笑ってしまった
……………安全第一ヘルメットとヌンチャク……………
何て間抜けなラインナップだろう
この世界は危険に満ちているという認識から自己防衛の為なのだろうけどろくに使い方もわからないヌンチャクでどうしようとしていたんだ自分………
相手が普通の成人男性でも全く勝てる気がしないが、気持ち少しだけ強くなりたいと出発前にブルー○・リーやジャッ○ー・チェンの映画を見ていたのだ
わかりやすく感化された影響だ
しかも映画を見ただけであたかも強くなった気分でいたが彼と会える希望にハイになっていた私は自分の奇行に恐れすら抱いた
……………彼って凄い、と染々思う………………
自分でも呆れを通り越す馬鹿をお嫁さんに選んでくれたなんて………尊敬しか無い
懐が深い……………素敵……………好き………っ
なんて再三彼に惚れ惚れしながらリュックを探れば出て来た金ヅチ
「……………………あ!!!」
私は途端にガバリと部屋を振り返った
本来の目的では無く護身用として持って来た金ヅチは父が長年仕事で愛用していた物だった
丁度買い替えるなんて言って出発前にくれたのだ
そして私は意気揚々と立ち上がる
………今こそこの金ヅチが活躍する時が来た…………!!!
私は忌々しきフローリングの修繕を開始する事にしたのだ
私が人生で初めて生爪が剥がれるという大変痛々しい事故を起こしたのは他でもない……古びたフローリングの反り返りが原因だった
それから足元に注意して見ればそこかしこに発見した反り返りはまさに地雷ッ
もしかしたら他の爪も……更に爪という鎧を無くしたデリケートな指を再び……………
………同じ過ちを繰り返さない為には反り返りを撲滅するしかない!!!
きっと金ヅチも本来の役目を全う出来た方が幸せだろう……なんて誰に言うでも無く考えながら鼻息荒くフローリングを打ち付ける
「技術の先生に褒められた腕前をとくと味わうが良い……!私、私はやるでお父さん!」
私はコツンコツンと音を鳴して夢中に成って金ヅチを打ち続けた