ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第156章 ある日の二人
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少し涼んだ後、テレビを付ける気分にもなれず暇を持て余しリュックの整理を開始した
村の雰囲気は大好きだし心地好いけど娯楽は皆無である
いい加減テレビとネットの繰り返しにも飽きてしまってクローゼットからビッグサイズのリュックを引っ張り出した
登山にでも使いそうな立派なリュックは異世界行きを決意した時に買った物
私はその中に様々な物をぎゅうぎゅうに詰め込んでやって来たその中には希望と不安なんて物も入り交じっていたけれどいつの間にこんなに使用感抜群になっていたのだろう……
ガサゴソと中を探れば生理用品や親方のご飯、彼の写真集、簡易救急箱、日記帳等、此方でも使う物が先に出て来て
そう言えば詰めた荷物の中でも全く使っていない物もあるなぁ……なんて思う
はっきり何を持って来ているのかは思い出せないが、とにかく未知の土地で役立ちそうだと感じる物を厳選した記憶が脳裏に浮かんだ
私が引っ張り出したのはぶら下げるタイプの虫避け
既に使用期限は過ぎていて何の役にも立たないガラクタになっていた
だけど山を越えて野宿したあの日、私は此れを首からぶら下げる事で虫の恐怖を和らげたのだ
新品のまま不要品になってしまったけれど持ってきて良かったと思う
実際効果があったのかはわからないが気持ち的に凄く助けられた
「ありがとう、お疲れ様!」
なんて言いながらゴミ袋に手放して私はまた次の物を発掘した
黄色いお弁当箱
私が実家で暮らしていた時母が持たせてくれていたお弁当箱は異世界まで母の味を運んでくれた
数回彼とのピクニックに使用したけれど母の料理が恋しいな……なんて蓋を開ける度に思い出していた
「これは……これからもよろしく」
次に出て来たのは新品そのままのソーイングセット
過酷なサバイバルを想定し、衣服がボロボロになっても縫える様に……なんて思っていたが全く出番が無かった
他にも彼の破れた仕事服を私が……なんて妄想も込められていたけど彼は破れた服を縫ってまで着ないセレブだと忘れていた
……………よし、捨てる
多分この先も出番は無い