ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第156章 ある日の二人
そんな訳で私は村を散策する事にした
やはり一人で独創的な遊びを極めてしまうより外界との接点は持つべきだと思ったのだ
勿論彼に許可は取得済み
恐ろしくてミュールなんて履けないのでペタンコのサンダルを選んで気の抜けていた身形も整えた
空を見上げれば濃さを増した青空が晴れ晴れと広がる良い天気に足取り軽く、私は鼻歌交じりにアパートを出た
何処を見てもレンガ造りでレトロな村は本当に小ぢんまりとしている
全てを見て回った訳では無いけれどゆっくりと歩いても一周出来るだろう
閑静な住宅地を囲む緑の香りと小川のせせらぎ
村の人達はそんな豊かな自然の中で何を飾るでもなく伸び伸びと生活をしていて
こんにちはが何処でも返って来るこの村は皆人好きな優しい性質の人々なのかもしれない
特に何がある訳でも無い
お店だって商店しか無い
だけど何故か落ち着く雰囲気は本当に素敵だ
そこかしこに見える茂った畑は瑞々しい異世界の作物を実らせていてその綺麗な景色を写真に収めてみたり
民家の窓を然り気無く飾るステンドグラスを眺めてみたり
煙突があるから冬は寒いのだろうかと想像してみたり
ぼーっと歩いているだけで緩く柔らかな気持ちに成った
途中、商店で購入したアイスを咥えながら歩いた先で井戸を発見した時はテンションが上がった
まだまだ現役らしき石造りの風貌に感心したり小さな池に泳ぐ金ぴかの小魚を観察したり
お散歩、と言うのが本当にしっくり来る村探検はいつの間にか辿り着いたベンチにて終了と成った
彼とピクニックをしたベンチは拠点の直ぐ裏だ
村散策だって本当は彼と二人で巡れたら素敵だったけど………彼にも見せようと張り切った分思いの外沢山の写真を撮っていた
じんわりと汗が流れるシャツの胸元をパタパタと扇いだ私は暫く透明な小川を眺めた後にアパートへ帰った