ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第156章 ある日の二人
「…………………………ッ!!!!!!」
ガバリと見下ろした私の足元に広がった血痕と生々しく剥がれ落ちた爪は私の感情を全てぶっ飛ばした
心底愛する人に愛される事がこんなに幸福なのだとか
あと何度彼と甘い時間を過ごせるのだろう……なんて余韻や感傷が脳裏に消えて振り切る痛みメーター
めっちゃ痛い、くらいに思っていたものがいざ目の当たりにしてみると想像を越える大惨事
今自分の小指から爪が剥がれたのだと認識した途端にめっちゃくちゃ痛み始めて
よく晴れた朝、04時31分
私はその場に崩れて漂っていた情緒をぶち壊す激しい雄叫びを上げたのだった
「……うっ……あぁあ"………爪ーーーーー!!!私の爪ーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
_________"
そんな訳で、数日が過ぎた今何処かへ旅をしていた余韻に再び浸りながら彼の帰宅を待っている
彼がいない事に慣れる事は全く無いけどあの時に酔いしれた様な悲しみは今は無く、幸せを噛み締められる私は中々に素敵だ……なんて自惚れてみながら
突然別れを迎えた今は亡き小指の爪跡を見詰める
結局これのせいで彼にいってらっしゃいを言いそびれてしまった
…………彼から連絡も届いているし彼が無事なら本当にそれだけで良い、と言うか寧ろ無事でなければ無理なのだが
彼と目まぐるしく過ごした日々と違いたっぷりと一人の時間を過ごす今私は余韻に浸る事を密かな楽しみにしていたのだと気が付いたのだ
それがどんなに些細な事でも相手が彼ならそれだけで私は本当に幸せな気持ちになる
例えばあの時の彼の仕草がカッコ良かったとか、手が少し触れた、なんてレベルでも私のニヤニヤは止まらず
互いの体温を伝え合った日には………
幸せの大海原に飲み込まれてしまう!!!!
「きゃーーーーーーーーーーーーー!!!ふふふふふふふふふ」
こうして彼との思い出を反復して彼に無限に胸キュンさせられる一度で何度も美味しい贅沢な遊び…………!!!
私はこの遊びと称した気持ち悪い奇行を数日繰り返している
そしてしっかりとわかっているのだ
………多分このままだとヤバいな、と言う事を。