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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第156章 ある日の二人






06月15日



私は一人扇風機に髪を揺らしながらぼんやりテレビから流れる軽快な音を聞いていた

フローリングにべったり背中を預けて天井を眺める私の格好は誰が見てもだらしないだろう

ブカブカのTシャツにストライプのハーフパンツと部屋着全開の姿でただのろまに進む時を過ごしている




…………と言うのも、あの日


あのクールなタフガイの彼が甘く激しく私を愛してくれたあの時以来私は彼と顔を合わせておらず深刻な旦那様不足に陥っているのだ


時間という概念を忘れて深く愛を確かめた私達は狭いシングルベッドで寄り添い甘い戯れに浸っていた


彼が気だるそうに目を細めた姿、薄い朝焼けに色付く姿を私は確かに見ていたし

彼から移る体温、そして確かに吐き出された愛の囁きにどうしようも無い幸せは脈拍と共に指の先まで巡って

私は危うく還らぬ人となりそうな程に満たされていた



しかし………………ッ!!!!





_________"




気だるくも心地好い余韻をそのままに微笑んだ私は胸に溢れた想いを今にも瞳から流してしまいそうだった


彼に何度伝えても伝え足りない

私の知っている言葉では全てを形に出来ないけれどそれでも喉を震わせた声は無情にも無機質な電子音に掻き消えた



「……イルミさ『プルルルルルルルルル』



彼と私の丁度真ん中で煌々と光ったスマホ画面


彼は先程迄の穏やかさ何て欠片も残さずに通話を始める


つい数秒前までこの小さな世界に大好きな彼と二人ぼっちの様に感じていたのに……薄く入る朝日すらも温かく感じていたのに……


一瞬にして私の世界は景色を変えた


温か味の無くなった冷やかな声と闇を纏う彼の横顔が私の肌をピリピリと震わせて彼は一人の男性から暗殺者に成る


これまでも何度か垣間見たその顔は妖しくも美しく薄ら灯りの中に姿を溶け込ませて

特段表情が変わった筈では無いのに私達を包む空気は彼の放つ雰囲気に一変していた



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