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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第155章 汗ばんだ夜







自分の手作りとは違う温かなお袋の味は私の胸を盛大に綻ばせたのだが……彼はどうだろうかとチラリと様子を伺えば

私と同じにカツを口に運んだ彼は拍子抜けなくらいガッツリと食べていた



「………どうです?」


「案外悪くないね、きっとプロが作ったんだろう。」


「ですかね!めっちゃ美味しい!!」



(いや、絶対あのお義母さんが作ったお弁当やと思うけど……良かった……)


彼のお気に召して本当に何よりだ


と言う本音は一応黙っている事にしてみるみる夜の気配が深まる辺りを見渡す


先程までもっとハッキリと見えていた小川の輪郭は最早闇に溶けてその音だけで存在を伝えている


所謂田舎の村には街灯が一つも無いのだ

幸い私達の手元はアパートから漏れる光でうっすらと照らされているけれど

私が知っているより早く夜は訪れて辺りの景色を奪うのだがホタルの気配は無く食が進むばかりで



「ホタルまだですかね……?」


「じきに光るよ。」



腹ペコだった私はすっかりお弁当を平らげて缶を傾け彼もまた瓶のままウイスキーを煽り始めた



「楽しいですね!」


「別に何もしてないけど。」


「してますよ!イルミさんとホタル待ちピクニック!」


「なにそれ……これってピクニックだったんだ。」


「立派なピクニックですよ、イルミさんは楽しくないですか……?」



その無機質さとは似つかないワイルドならっぱ飲みを決めた彼の横顔に視線を向ければ夜に溶けそうな双眼が此方を見詰め返した




「………楽しいかな。」




アルコールに濡れた唇を無造作に拭う仕草が色っぽくもふっと表情を緩めた彼の姿にドキリと心臓が高鳴った




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