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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第153章 村の片隅で始まる






私はワクワクをそのままに足早に室内へ足を踏み入れて泣きそうになった



廊下側に付いた小さな小窓とキッチン

部屋は見渡す程も無い小さな異世界のアパートは私のあの部屋を彷彿とさせたのだ


色褪せたフローリングは歩けばギシリと音を立てて

小さな小さな部屋の真ん中でリュックを置いた彼はゆっくりと私を振り返った



「観光産業も何も無いから宿泊施設も無いし、他に空きも無かったから暫くはここで………何その顔。」



大きなベランダから燦々と注ぐ太陽

日に焼けたフローリング

所々ひび割れた壁

言わずともボロボロのアパートは私を見事に泣かせたのだ


悲しいとか苦しいでは無く似た景色に重なる懐かしい日々



「……ずみません"……」


親方のケージをそっと床に置いて慌てて涙を拭えばじっと此方を見ていた彼は静かに唇を開いた




「大丈夫だよ沙夜子」


「…………え」


じわりと滲んだ視界に彼の真っ直ぐな瞳が映る


彼はいつも通り無表情ながら何処か真剣な眼差しを向けていた


………彼は何に対して大丈夫だと言ったのだろう




…………………もしかしたら私の気持ちを察して私達の確かな未来を……………なんて






「大丈夫、この建物は凄くボロボロだけど事故物件では無い。」




全然違った


わかってはいたけれど全然違った


しかし、彼の真剣な面持ちとすっとぼけた発言に自然と胸が綻んで漏れた笑い声


私がボロ家からホラーを連想し、怖くて泣き出したと思ったのだろう

事前に調べてくれていたなんてズレてはいるが優しいに違いなく



「…………そ、そっか………良かったぁ!!!」



気が付けば涙が止まったその顔で私はくしゃくしゃに笑っていた






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