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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第153章 村の片隅で始まる







真っ青な空に絵本みたいな白い雲


遠く向こうにカラフルな気球がいくつも飛んでいるのが見えて異世界の年明けを思い出す


キラキラ輝いた地平線を気球の上から眺めたあの日私は幸せだと叫んだのだ


今もその気持ちに変わり無く、寧ろ膨らんで行く幸福の分1分1秒と過ぎる時の流れがズキズキと胸を痛めた



こんな時はとりとめの無い話が口から漏れる




「ねぇ、イルミさん気球乗せてくれましたよね!めっちゃ高かったですね!」




只彼が傍にいるのだと感じたくて何を考えるより先に唇から弾んだ声は自分の気持ちから目を反らす様に明るく車内に響いて



「沙夜子怖がってたけどね。」


「そんなんちょっとだけですよ!」


「ふーん?」



抑揚無く届いた彼の声色は心無し柔らかいもので


戯れの様に他愛ない話を続けている内


遠目に連なって見えていた山並みを遥々越えて夜が深まっても彼は車を動かし続けた

到着は翌朝との事でガタガタと舗装されていない暗闇を私達だけが行く

街灯の無い分落っこちそうに美しい星空は静かに瞬き、私は飽きる事無く眺めていた


私の世界には無い星座をいつかの彼は私に沢山教えてくれた



「狭いだろうけどしっかり寝ておきなよ。」



車内に聞こえるのは安心感のある愛しい声で私は静かに耳を傾けながら瞼を閉じる



「イルミさんは寝ないんですか?」


「朝には到着していたいからね。」


「……でも疲れたらちゃんと寝てくださいよ……?」


「うん。」



ドライブBGMも何もない

只エンジン音が低く響いて



「ねぇイルミさん、私自分が思ってたより凄い人生になりました」


「ふーん。」


「私イルミさんの世界にいてるんですね」


「そうだね。」



座席越しの彼の背中にポツリポツリと語り掛ける内にまるで揺りかごに揺られている様に心地好い微睡みへと落ちた






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