ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第26章 彼の気持ち
彼が一人で歩いたならもっと颯爽と歩幅も広いのだろうが彼は私の歩幅に合わせてくれる
加えて漫画の舞台に成った街な事もあり時折立ち止まる私に彼は黙って付き合ってくれた
………………カメラが欲しい………と思ったが我が儘は言いたく無いので口には出さなかった
彼が連れて来てくれたのはカジュアルな洋服が並ぶブティックだった
持って来た洋服は全部で5着………と言っても黄色いTシャツは昨日お釈迦に成ったので手元に在るのは部屋着も含めて4着だ
確かに生活して行くには心許ないしここは素直に甘える事にした
………しかし此方の世界はダサ…………趣味の合わない洋服が多いとばかり思っていたが店内を物色すれば可愛い洋服が沢山あった
彼は特に干渉する事無く一歩引いた場所で立っている
しかしあまり時間を掛けるのも悪い気がして気に入った3着を手に近付けば
「其れだけ?あと10着選んで。別に他の店でも良いけど」
「………そんなに要りませんよ!悪いし……」
なんて言った私に
「これから色々な場所を転々とする事に成るし、洗濯が直ぐに出来る訳じゃないから」
という明確な理由を教えてくれた
これは遠慮していては逆に迷惑というやつだ
私は10着プラスでズボンやスカート迄買って貰い可愛らしい紙袋は彼が肩に下げている
黒いVネックのシャツにジーンズ姿のモデルさんの様な彼にピンクの紙袋は酷く似合わないが荷物を持つと申し出ても彼はスルーを決め込んだ
「はい、次ここね。」
次いで彼が立ち止まったのは靴屋さんだった
確かに私はスニーカーしか持っていないので有難い
「ノルマは10足以上ね。」
3足くらいで良いだろう……なんて思っていた私に先程の事を踏まえてか彼は先に数を提示した
…………しかし………私はショッピングに行っても一辺にそんな大量の買い物をした事が無くとんでもない贅沢に内心戸惑っていた
パンプスにサンダル、バレエシューズ等比較的楽なデザインを選んでいた私だが不意に彼に手招きされて近寄れば試し履き用の椅子に座らされゴージャスなアクセサリーの装飾が付いた黒のピンヒールを手渡されてしまった
見れば9センチはありそうなヒール………歩けるだろうか………?
「こういうのも必要だから。」