第150章 本当の笑顔

……………そして




「じゃ、あたしそろそろ行くわ！」


紅茶を綺麗に飲み終えたランさんはニッコリ微笑んだ



「イル、しっかり沙夜子ちゃん幸せにするのよ！」


「………はいはい。」


「全く可愛げの無い………元気でね」


「…………ランもね。」


「きゃー！！今の聞いた？かわいー！！」


「……………うるさい。」




懐かしさを滲ませた優しい眼差しはやはり母を思わせて

そのままの瞳を向けたランさんは私をその胸に抱き締めた



「あーもっと沙夜子ちゃんと仲良くなりたかったわ！」


「私もです」


雑じり気の何もない真っ直ぐな言葉は素直に私の心に届いて私も彼女を抱き締め返せば



「ちょっとしたアドバイス」


耳元に落ちた小さな声


「イルは百戦錬磨の男だから骨抜きにするには時に努力も必要よ、たまにはベッドで沙夜子ちゃんから襲ってやりなさい！男って馬鹿だから案外そういうの好きなんだから」


ヒソヒソと伝えられた唐突な内容に目を見開けば、パッと離れたランさんは


「それじゃあ、沙夜子ちゃん元気でね！」


なんてあっけらかんと笑顔を浮かべて



「………ちょっと、今沙夜子に何言ったの。」



ヒソヒソ話に気付いたらしい彼が眉にシワを寄せるのもそのままに颯爽と玄関へ向かうと



「女同士のナイショ！じゃあね！」



振り返った彼女は太陽の様に明るくそして悪戯な笑みを残して部屋を後にしたのだった