第150章 本当の笑顔

何が何でも強く無ければ生きては行けない

彼が生まれたのはそんな世界だ

世界中に名の知れた暗殺一家

その長男に生まれたのだから彼は必ず全てを担う

彼にはそれだけの価値があり責任がある


そして何よりあたしには彼を死なせない義務があった


死なせない為には力を付ける以外に選択肢は無い



幼い彼に合わせたゲームの難易度は日に日に熾烈を極めて


返り血と鉄の焼ける匂いを引き連れた彼があたしを見付けに来るのをあたしは何時間でも待っていた

この身を持って彼の成長を感じていた全てが懐かしくて愛しい日々





瞼を開けば瞬く星がゾルディックの鬱蒼とした庭を思わせて


白い肌に擦り傷を付けたあの子の姿が今も脳裏に浮かぶ


肩で息をしながら真っ直ぐにあたしを見詰めてぶっきらぼうに「見つけた」と言うのだ



もっと可愛く抱き付いたり出来ないのかしら………無愛想な子


だけど差し出された傷だらけの小さな手は確かにあたしに向けられたもので

その手を握る度にどうしようも無く胸が綻んでいた