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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第150章 本当の笑顔







広大な庭は宿泊スペースを抜ければ鬱蒼とした森林が広がっている

足場にも時折見える無骨な岩肌は開拓時代からそのまま残されているのだろう


あたしはその暗闇の中でひっそりと息を殺して彼がやって来るのを待っていた


見上げた空に27年前を重ねて瞼を伏せる


あたしは所謂乳母として派遣された

過去の職務経歴やあたしの家系の融通で貴族であるゾルディック家に特別推薦されて数ヶ月目の事

誕生した男児を抱いたその日からあたしは母に成ったのだ


未来を担う彼と出会ってからあたしの知りうる全てを彼へ教えた

語学や心理学、テーブルマナーからダンスまで……本当に様々な事を



その中でも"かくれんぼ"は重要な訓練の一環だった


あたしの能力は空間の支配


一見何の変化も感じられない場所でも半径2キロメートルはあたしのテリトリーになる

条件に少し手間取るが一度発動してしまえば全ては意のまま

本来そこに存在しない筈の人間や建物、武器の類いでもあたしの脳が働く限りは念が尽きるその時まで半永久的に生産し続ける事が出来る


そして最大限の力を出現させる為の絶対ルールは対象者を一定時間監禁する事


彼を監禁したホワイトボックスはゲーム開始の合図だ




あたしは幼い彼を閉じ込めて強制的にゲームを仕掛けた


敵の配置、武器の配置、全てはあたしの気分次第で変わるけれど

50人の敵が潜むゾルディックの敷地を彼は懸命に走っていた

難易度は当時の実力を考慮しながら徐々にレベルを上げて

彼より少し実力で勝る敵を配置しても彼は果敢に立ち向かった


無表情でぶっきらぼう


何を考えているか分かりにくい面倒な子


だけど『あたしは死ぬ』の文字に懸命に戦う彼を心底愛しいと思った




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