第149章 私がかける言葉

実に穏やかな夜が明けて勝負はいよいよ今日



まだ早朝だが近付いた決着に胸が騒いで仕方がない



……心底幸せだと、彼を愛しいと感じた昨夜が最後かもしれない……


そんな事は無いと思ってみても不安は不安なままで

今この時が彼を見る最後だったらと思えば酷く恐ろしくて今更過ぎる後悔に自分が嫌になった


昨日の私は動揺し、簡単に口車に乗ってしまった挙げ句正々堂々と勝負しようだなんて考えていた



彼を失ったら私はどうなってしまうのか……なんて考えなくとも自分が一番よく解っている筈なのに……





テーブルで上がった２つの湯気




「ありがとう。」


「いえ！」



すっかり目覚めた大きな瞳が忙しなく仕事用のスマホを見詰めている姿を盗み見ながら私は平静を保っていた




不安ばかりが膨らむけれど私が彼を信じないで誰が信じるのだろう

彼の気持ちを確かめたい………だなんて独占欲と嫉妬に駆られてしまった自分は馬鹿としか言い様が無いが


最終的に私に出来る事は彼を信じて帰りを待つ事


それが私の勝負だ