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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第147章 嵐吹き荒れる前の







「あたし、一人で寂しいの……お部屋付いて行っても良いかしら沙夜子ちゃん!」


「はい!」


部屋へ遊びに来たいと無邪気に笑う彼女を私は即答で部屋へ招いた


彼は大きな溜息ばかりを漏らしているけれど特に止める事もしなかったので平気なのだろう


特殊な生い立ち故に彼の昔を知る人は早々いないと私は思う

友人もいないと言い切る彼

そんな彼が気を抜いたまま話す相手を私は自分以外に初めて見た


ほんの少し複雑な気分だが私なんかよりずっと昔からの付き合いの二人、私の知らない事があったって当然だ

大した事は無いが私にも彼の知らない過去があるし

きっと無表情な彼の胸の中も懐かしさが溢れているだろうと思ったのも部屋へ招いた理由だった








三人分の飲み物を銀のトレイに乗せてリビングへ運んで私は一瞬たじろいだ


ソファーで長い脚を組み鬱陶しそうに髪をかき上げた彼

そしてそんな彼の肩に手を触れて艶やかな黒髪を指先で遊ぶランさんの姿が目に飛び込んだのだ


「随分髪が伸びたのね」


「別に。」


なんて色っぽく笑うランさんと面倒臭そうにポツリと呟いた彼


しかし私の姿に気付いて姿勢を正したランさんは私に満面の笑みでありがとうと言った




私の中に嫌なモヤモヤが広がった瞬間だった


他人との接触を嫌う彼が平然と触れられている


触れられている事を意に介さず受け入れている



漠然とした違和感とフツフツと沸く嫉妬心




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