ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第146章 穏やかな午後
テレビも付けずに窓から時折入る風が優しいレースのカーテンを揺らすだけの空間に私の声はポツリと響いて
マグカップ片手にスマホとにらめっこしていた彼は解りやすく怪訝な目を私に向けた
言わんとしている事はよく解る
彼は私に二時間に及ぶ説教やはたまた猟奇的な色を隠しもしない激怒っぷりを見せてきた
全て私がやらかしてしまったと言って過言で無い過去を踏まえて何を言い出すのか、と思うのは当然だろう
「今まで……俺が怒ってないと思ってたの?」
端正な顔立ちに潜められた眉、まるで信じられないこの馬鹿とでも言い出しそうな声色に私は慌てて唇を開いた
「違います違います!!あの、何と言うか……イルミさん私が変に絡んでもイルミさんの手ぶんぶん振ったりとかしても怒った事無いでしょう?」
「……………。」
「その……何と言うか……私がどんな危害を加えたら怒るのかなぁって………イタズラ的な………」
私の言葉を静かに聞いていた彼は腑に落ちた表情を浮かべた後に溜息を付いた
「また下らない事考えたね。」
「下らなくないですよ!!」
全く下らなくない
私からしてみれば興味無さ気でも何でも付き合ってくれる優しい彼のボーダーラインというのは重要な情報だ
いくら優しくたって苛立つポイントは人間誰しも持っているし
それさえ踏まえていれば無駄な喧嘩を回避出来るかもしれない
早速興味を失った様にスマホに移った彼の視線を他所に一番に思い付いた事を確認してみる事にした
「いきなり冷たい物を肌に引っ付けられたらどうですか?」
再び交わった視線の先
「冷たい物って何。」
間髪入れずに返る反応に頬が緩む
やはり彼は下らないと感じる話題にも付き合ってくれるのだ