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ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編

第144章 涙と私達








「ムーシャの天空闘技場へ行った事は覚えてるよね」


「…………はい」


「実は賞金以外にも景品があってさ」


「…………そうなんですか……?」



ぼんやりしていた私の頭はあの日の事を思い出していた



砂漠の都で王子様みたいな格好をした彼は突然予定を変更して闘技場へ出場すると言い出した

理由は運動不足

そしてドラゴンに乗って天へ登り

少しあどけない姿をした彼は見事優勝して賞金を受け取っていた







不意に目の前に現れたプレゼントに私は目を見開いた




「あの大会の副賞は異世界の桜。……つまり沙夜子の世界の桜だった。」



ガラスケースに保存されて美しく咲き誇る桜の一枝は間違い無く私の世界で花を咲かせる桃色の桜だったのだ



「俺の世界でこの色の桜は存在しないから沙夜子に見せてあげようと思って。」


ぶっきらぼうに言った彼を見上げる



……………彼は私の故郷の桜を手に入れる為に戦ってくれていたのだ

私に桜を見せてあげたいと言った言葉にどれだけの想いが込められているのだろう………


胸がぎゅっと締め付けられてまた涙が溢れそうになる


彼とも眺めた桜


あの時


桜を見ている彼を私は見ていた






「永遠に枯れない様に保存されているけど……こんなものいらないよね?」


「……え、ちょっと待って!!」




ケースに入っているからこそ咲き誇っている桜

そんな桜にあの時の桜を重ねて今までの日々が閉じ込められている様な気持ちになっていた私は慌てて手を伸ばしたのだが


無情にもケースを取り払った彼は桜を取り出して私に差し出した





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