ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第144章 涙と私達
気が付けば隣に立っていた彼がいつから其所にいたのかはわからないけれど
隣に腰掛けた彼は何も言わず只波音だけが二人の間に響いた
「…………ねぇイルミさん……あと三ヶ月ですね」
無言を破った私の声は酷く震えて
「そうだね。」
彼は普段と変わり無い単調な声を落とした
今隣に存在している彼と会えなくなる
声を聞く事すらも触れる事すらも出来なくなる
気が付けば彼に手を伸ばしていた
………彼の存在を確かめたい
…………彼と離れたくない
そんな私を真っ直ぐに見詰めながら只されるがままに私に抱き締められる彼
大好きな彼の香りと温もり
全部手が届かなくなってしまう
一度味わった恐怖に胸が張り裂けてしまいそうになる
頼もしい胸板を涙で濡らしながら泣き続ける私がどれだけそうしていたのか
まるで慰める様に背中を撫でていた彼の手が止まりポツリと落ちた言葉
「沙夜子にプレゼントがあるんだけど。」
彼はそう言うと私を軽々抱き運んでソファーに下ろした
すっかり日が暮れて薄暗く成った部屋
彼はベッドルームから後ろ手に何かを持って私の前にやって来た