ここは彼の世界です【HUNTER×HUNTER】続編
第144章 涙と私達
お酒も進み太陽が傾く頃
私はアキホさんと女子会さながらの会話を弾ませていた
女子会と言えば恋バナというのは異世界でも変わらず旦那様方をそっちのけに私はアキホさんとダンさんの馴れ初め話に嬉々として相槌を打っている
今夜停泊する国一の財閥跡取りだというダンさんはジャポン出張の際小料理屋でアルバイトをしていたアキホさんに一目惚れ
アキホさんもダンさんに一目惚れだったらしいのだが
貴族社会に無縁なジャポンの一般家庭で育った故に結婚する迄の道程は随分と困難だったそうだ
「教養もマナーも知らない小娘ですから、様々な事を一からお勉強してやっとご両親に認めて頂きました」
しおらしく笑うアキホさん
しかしジャポンを離れれば滅多に家族には会いに行けないし知る人のいない未知の世界はアキホさんにとって多大な不安と重圧を与えたそうで
「マリッジブルーと言いますか……そんな状態に陥っている時に沙夜子さんとお会いして」
「………ほぉ」
「私と同じ境遇の方が明るく笑っていらっしゃるのを見て凄く安心しました」
アキホさんは輝く様な淡い微笑みを真っ直ぐに向けた
マリッジブルーを乗り越えたアキホさんは明るい未来を見据える事にした、と言ってこれからの事を教えてくれた
ダンさんの国には既に新居が構えられている事
ジャポンの物を取り寄せて和室を作る事
子作りの重圧も二人で相談し、専属医師がサポートしてくれる事に決まり
ジャポンのご家族も大変喜んでいる事
そして何よりダンさんのご家族がそうと決まればと温かく歓迎してくれている事が何より嬉しいのだと締め括ったアキホさんに私は出来る限りの笑顔で頷いた
「すみません、私ばかりお話ししてしまって……沙夜子さんご夫婦の馴れ初めも是非聞かせてください」
この時私は巧く笑えていただろうか